歯科治療Q&A

SNSより寄せられた歯科治療の
質問への回答をご紹介します。

一部編集しておりますが、できるかぎり原文のまま掲載しています。
また、専門用語含めて、質問された方が書かれた言葉を敢えてそのままにしております。

治療後にしみる、自費を勧める歯医者はヤブ?お金目的?

2025.06.19

質問

虫歯治療

被せ物&詰め物

質問

こんにちは。
右下の奥歯の虫歯が大きく神経ギリギリまで削った歯が一時的にしみてきました。担当の先生は神経残せそうですと言ってくれたのでいい先生に出会えたと思いましたが、やっぱりヤブだったのでしょうか?(急患で診てもらい、しみ止めを塗って経過観察と言われました。)

今はしみる症状は落ち着いてますが、自費の詰め物を勧めてきます。お金が目的なのでしょうか?詰め物入れたあとしみてくるかもと思うと心配です。

回答

回答

ご質問ありがとうございます。
個人の意見にはなってしまいますが、少し長文にお付き合いください。

さて、まずヤブだったかどうか?という所から入りますが、そこに関しては

分からない

というのが結論です。
しかし、僕がヤブかどうか分からないというのは、治療を見ていないからという理由のみで、恐らく質問者さんが思っている理由と異なります。

質問者さんとしては

1、神経残せそうですと言ってくれてたのに、しみてきた
2、自費の詰め物を薦めてくる

この2つをメインの根拠としているなら、それは違います。

むし歯が大きい人というのは世の中に山程います。
また、大きい=深い≒神経ギリギリという言葉も先生によって基準が少し異なりますし、削ってみたら思ったより深いなんてこともありますし、神経を残せるかどうかの判断基準も先生毎に異なるというのが現状です。

今回のケース、術前のX線や状況等が分からないのですが、1つだけ分かっているのは、その先生は深いむし歯だけど神経は取らなかったということです。

特に最近の先生に多いですが、無闇に神経を取らないのは1つまともな先生だと思いますよ。

(昔の先生が悪いという意味でもなければ、神経を取らないが時として判断ミスとなることを考慮した上での意味合いです)

ただ、個人的に2点だけツッコむなら、説明不足?としみ止めの薬を塗った事

ですかね。

それだけむし歯の大きな歯を削るなら後日神経を取る可能性や、痛みが出る可能性をどこまで術前にきちんと説明していたかが肝になります。

これが説明不足だったり、患者さんの理解が得られていないと痛み=不信感に繋がる事が多いですからね。

あと、ほぼ間違いなくむし歯を削ったことによる痛みなので、全く効果がないとは言いませんがしみ止め塗っても大して変わらない事が殆どなので。

自費の詰め物を薦めてくるというのは、今の御時世なら正直普通です。
地域とかにもよるかもしれませんが。

その先生が行う保険治療よりは自費治療の方が良いのは確実ですから、薦めるのは至極当然です。

経営的にも、もちろん聞かない理由がありません。

しかし、これもコミュニケーションの問題で、むし歯を削った後に神経残せると言ってたものがなんか痛くなったというぐらいのレベルで不信感が出てしまうのであれば説明不足か説明の仕方が悪いです。そこに高いものを薦められれば、人の心がどう動くのかは誰でも分かることですからね。

個人的には、本来なら削る前から全て話し合って決めておくべき事項です。

また、詰めた後にしみてきたらどうしようという事ですが、今選択出来ることは

このまま神経が残ると信じて前に進むか、しみるのが怖いから神経を取るかの2択しかありません。

今回どのような治療がなされたかは分かりませんが、基本的にできる限りをしてこの状況なら歯科医師的にもそれしか出来ないんです。

・セラミックを入れて10年以上このままもつかもしれない
・セラミックを入れて1年で激痛になり壊して神経治療になるかもしれない

すぐに壊すことになるなら保険にしようかな、どうしようかなとなるのはよく理解できます。

医院さん毎にその辺の心を汲むような保証があることもあります(当院では少なくともあります)。

詰め物の精度はその神経を取るリスクにそのまま影響するのもまた事実なので、歯の事だけを考えるなら、より精度の高い詰め物を入れて神経治療にならない事を祈る。が正直なところ正解の枝になると思いますが、それはもう価値観にもよりますので無理強いはもちろんしません。

未来は誰にも分かりませんから、確率を高めるという行為までが限度です。

回答は以上ですが、下は余談です。

既に十分長いので、ここから更に長文を読みたい方のみどうぞ。

他の方もご覧になるだろうから敢えて少し脱線しますが、神経をとった事がある方は恐らくかなり多いと思います。
しかし、元々その歯が激痛だった方ってどのくらいいるでしょうか?

激痛じゃないどころか全く症状が無かった所から、いきなり神経をとる事になった人もそれなりに居るのではないでしょうか?

神経には勝手に死んでしまう壊死と呼ばれる状況で取るしかないものや、元々症状がなくてもどうにもならないから神経を取るものもあるにはあります。
しかしその一方で、本来なら神経を取らなくて済んだ歯だけど神経を取っているというものもかなり多く存在しているのが事実です。

その区別は患者さんにはつきません。 
取ったあとにその答えを判別することも出来ません。
だからこの事象は無くなりません。

では何故神経を取る方向へ動くのか?
お金儲けですか?
→経営の問題の時もゼロではありませんが、多くの場合は違います。

神経ギリギリまで削った歯というのは当たり前ですが近い将来にトラブルに巻き込まれる確率が普通より高いです。

削った直後で言うなら、

元々症状がなかったのにしみるようになった。
噛むと痛くなった。
激痛が出た。

こんな事は普通にあり得ます。
直近でなくても半年、1年後に痛みが出る事もあります。激痛が突然でることも。

神経を取るという行為は術者の腕にもかなり依存しますが、確実に歯の寿命を縮めます。
しかし、2年以内にトラブルが起きることのほうが少ないです(例外もあるのが問題なんですけどね)。

何を言いたいかというと、神経を取った場合その多くが直近でのトラブルが起きづらく、逆に神経を頑張って残す、という本来なら良いことを良かれと思ってやったのに、歯医者さんで治療をしたら歯が痛くなったといったクレームをつけられる歯医者さんが多発したんです。

個人的には単なる説明不足ですが、現場の歯科医師はそんな長い時間説明できる先生の方が少ないです。

その結果多くの歯科医師が取った行動は

「説明をきっちりする」ではなく、

「先回りの治療を行うことで確実にクレームの元となりやすい痛み、もしくは痛みの原因と成り得るものを全部取る」

という行為です。

そしてここから行われる根管治療という治療は、本当に日常的によく行われておりますが、あまりに報酬が保険内だと安すぎて普通の街の歯医者で蔑ろに扱われやすい科目トップクラスです。

結果、所謂根の先に膿が溜まると説明されることが多い根尖性歯周炎に繋がり、一昨日僕が引用ポストした方のような話に繋がっていきます。

ちなみに次に待っているのは

きっちり根管治療をもう一度行うか?
それとも先回りして抜歯するか?

です。

きっちりやらなければループします。
きっちりやっても治らないかもしれません。
自分の歯は治療すればするほど少なくなります。

少ない歯で噛めば破折という現象が起きやすくなり、それはもう大体抜歯です。

日本人の歯を失う理由の歯周病、むし歯に次いで第3位(だったと思います)に入ってます。
それほど多いんですよ、このルートに入る人。

抜歯したらインプラントを第一選択としたお話が待ってます。

必ずしも先回りが悪ではありません。

神経を取る、抜歯などが全て悪とは全く思ってません。

インプラントも素晴らしい治療です。

しかし、確実に歯の寿命を縮める行為が

患者さんからクレームが出るのが嫌である。
不信感を持たれるのが嫌である。

という歯科医師の気持ちから日常的に行われている事が少なくないという事実は確実にあるという事をこの場を借りてお伝えさせて頂きました。

長文にお付き合いして頂き、ありがとうございました。