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知っておきたい「専門医」の実態~根管治療・矯正~

知っておきたい「専門医」の実態~根管治療・矯正~

こんにちは、三好歯科 自由が丘、院長の三好健太郎です。

今回は「専門医」の話ですが、少し難しいです。歯科に少し詳しい方や、特に興味のある方に向けた内容かもしれません。

さて、私は普段から、匿名で利用できるSNSを使っており、多くの方から歯科に関するさまざまな相談・質問をいただいています。その中から、最近いただいた質問をご紹介します(原文ほぼそのままです。質問者さんの許可はいただいています)。

「現在、自費診療を受けております。内容は、歯内療法専門医による根管治療で、症状がまったく改善しないまま、『痛みが強くなければ、治療は次回で終了となる』と言われました。これって普通のことなのでしょうか?」

もちろん、私が実際に診ているわけではないので詳細は不明ですが、実はこのような「専門医に診てもらっている中でのトラブル」という質問は非常に多く、常日頃から「専門性」を訴えている私にとっても、一つ責任のある話題だと思い、今回コラムとして書くことにしました。

それ怪しくない?乱立する「◯◯専門医」に注意

最初に結論を言うと、「どの分野の専門医であろうと、その先生の実力には極めて差があり、結局、現場でどれほどの経験を積んでいるか、技術を磨いているかがすべて」です。

身も蓋もないかもしれませんが、数々のセミナーや学会、そして尊敬する大勢の歯科医師を見ながら、現場で患者さんを治療しつづけてきた私個人の結論です。

例えば、日本の専門医制度にはいろいろと問題点も多く、専門医資格の取得の主な条件は「症例などの写真を撮って記録し、決められたセミナーや学会等に何年間か在籍して、提出物を出す」といったことです。

もちろん、その手間は尋常ではなく、症例も写真も条件があるため誰でも通るわけではありません。しかし、要はその“手間が大事”という状況になってしまっており、アメリカのように「多数の経験や実績があり、実力が高くて初めて取得できるようなもの」ではないと言えます。

また、医院の看板やホームページに掲げられる(標榜できる)歯科領域の専門医は、現時点では次の5つだけです。

・一般社団法人 日本歯科麻酔学会 歯科麻酔専門医
・特定非営利活動法人 日本歯周病学会 歯周病専門医
・公益社団法人 日本小児歯科学会 小児歯科専門医
・特定非営利活動法人 日本歯科放射線学会 歯科放射線専門医
・公益社団法人 日本口腔外科学会 口腔外科専門医

冒頭のSNSの質問にも出てきた「歯内療法専門医」や、よく耳にする「矯正専門医」も含まれません。これらを掲げるのは医療広告ガイドラインに違反するのですが、こういう肩書きを大切にしたい気持ちもわかります。
ネット上には他にも「歯科◯◯専門医」の表記が多く見受けられます。

 

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専門医を取るには、学会に何年か所属したり、指定のセミナーを受講したりするなど、お金がかかります。民間運営である学会にとっても、これらは大きな収入源になるため、専門医の種類はどんどん増えています。今では、歯科医師から見ても「なんか怪しくない?」と思ってしまう種類のものまで乱立しています。

1人の歯科医師だけが診る「包括的診療」見直しの動き

「じゃあ、専門医って意味がないのでは?」と思うかもしれませんが、もちろんそんなことはありません。専門医を取得された上で、現場の経験もたくさん積んでいる方や、本当に素晴らしい先生は、たくさんいらっしゃいます。

結局のところ、最初に述べた通り、専門医とは一つの肩書きに過ぎないので、先生ごとに実力差も大きく「専門医なら手放しで安心」とは言えないという話です。

例えば、多くの方が勘違いされていますが、「矯正を専門に行っている先生」と「矯正専門医」は、まったくの別物です。「矯正専門医」は数々の条件をクリアしないと取得できないため、人数が少ないのですが、私が知る限り、専門医で素晴らしい先生もいれば、そういった肩書はなくても非常に上手な先生もいらっしゃいます。逆も然りです。

結局、上手い・下手はその先生次第である、ということです。歯科医師もそれぞれ得意分野というのがあり、その分野に特に精通している(技術が高く、経験も豊富)な先生に診てもらえるならその方が良いですよね。

1人の先生がすべての分野の治療をオールマイティに行うことを、我々の世界では「包括的診療」とか「一口腔単位での診療」と言います。歯科はそれぞれの分野が密接に関連しており、日本の歯科医療の特性上、1人の先生が1人の患者さんを最後まで診るスタイルがほとんどです。言い方を変えると、包括的に診ることができない先生はほぼ存在しない、とも言えます。

ところが、日本で長らく基本となってきたこの「包括的診療」が、最近見直されてきています。

アメリカのように、医療保険制度がなく治療はすべて自費診療という国では、リーダーの歯科医師のもと、各分野の専門医が連携をとるのが普通です。こういったことからも「日本の歯科医師ならスーパーマンのようにあらゆる分野の治療も1人で全部をきちんと診られる」というのは無理がある話ではないでしょうか。

このワードの中でキーとなる言葉は「きちんと診る」です。言い方を変えると日本では「きちんと診る」の定義が存在しないことから、一人の歯科医師がすべての治療を診る、ということになっているとも言えると思います。

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治療成績が悪く難易度の高い「根管治療」

いろいろな分野のレベルを限りなく上げて、患者さんを包括的に診ていくのが歯科診療の基本ですが、私も「この分野に関しては、私よりもっとレベルの高い先生のほうが良い」と思うことがあるのが現状です。

その最たるものの一つが「根管治療(歯内療法)」です。歯科分野の中でも極めて難易度が高く、日本の保険診療でもっとも治療成績が悪いとされるのには、やはり理由があります。

そもそも、治療の基本ルールすら守らない歯科医院が全体の80%以上いるとされる中、当院は上位20%には入ると思います。手前味噌にはなりますが、ルールをしっかり守りつつ治療を行うことは簡単です。ただ、

何をもって、できると定義するか
何をもって、きちんとした治療とするか
何をもって、包括的診療とするか

ここが一番難しく、答えがない世界です。

ちなみに私自身は、根管治療以外のすべての分野(矯正を含む)を包括的に治療します。根管治療も取り扱いはしますが、自分に納得できていないので、治療自体は私ではなく副院長が行っています。

「矯正歯科」は唯一の例外 専門性が高いだけでは治療難

今まで、専門性に特化していることがいかに重要か、という話をしてきましたが、唯一、例外なのが「矯正歯科」です。専門性が高いだけでは微妙なことも多くあるのです。

ここまでお話しした通り、基本的に日本の歯科医師は、得手不得手があろうと1人で多くの分野を手掛けることが多い上に、ほぼすべての分野が密接に絡み合っているため、1つの分野しかやらないというのは、ほぼありえません。

そんな中、多くの矯正歯科医は、他の分野の治療をほとんど行いません。そこには日本の歯科の歴史的な背景も関係しているのですが、ここで問題なのは、他の分野の治療を行わないことではありません。他の分野のことをそもそもあまり知らない矯正歯科医が少なくない、ということが問題なのです。

例えば、歯並びだけを治したとしても、その後の咬合や矯正以外のちょっとした修正は、その先生ではできません。何より、矯正治療中に虫歯などができてしまった際に、その先生が治せない、矯正装置を外して虫歯治療をしたほうが良いのか、そのままでも良いのか判断がつかないとなると、患者さんは他の歯科医院へも行かなくてはならならず、明らかにデメリットになります。

そして一般的に、「矯正治療は歯並びを審美的に治すもの」という認識が強いですが、本来は、虫歯や歯周病、歯を失った後など、病的に歯が移動してしまったケースにもっとも強い効果を発揮します。

これに関しては、矯正治療に加え、虫歯、歯周病、入れ歯、インプラントなどを筆頭とした複合診療が必要です。先ほどお話しした「包括的診療」の最たるもので、矯正治療しかやらない先生では、とても太刀打ちできません。

私個人としては、矯正治療は、他の分野の治療技術や知識をある程度持っている歯科医師が行うべきだと考えています。もちろん、もともとは他の治療も行っていた矯正専門の先生や、私のように矯正を含め全般的に治療を行う歯科医師もたくさんいると思います。

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一方で、ほかの分野と同様、専門性のない歯科医師が矯正治療を行ってトラブルになるケースも出ています。昔はワイヤー矯正が主流でしたが、近年は、より簡単に治療ができる「マウスピース矯正(アライナー矯正)」の出現により、矯正治療の経験がほとんどない歯科医師が矯正を行ってしまうという問題が散見され、全国で大きな訴訟等も起こっています。

患者さんにとっては、歯科医院選びがより一層重要な時代になってきていると言えるでしょう。

三好歯科 自由が丘は、患者さんの歯の健康を真剣に考え、将来を見据えた診療をご提供しています。そのためには、皆様の歯科知識の向上が欠かせません 。歯のことでお悩みや疑問がありましたら、お気軽にご相ください。

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