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歯の神経を残したい、歯を抜きたくない、歯を削りたくない方へ

歯の神経を残したい、歯を抜きたくない、歯を削りたくない方へ

こんにちは、三好歯科 自由が丘 院長の三好健太郎です。
久々のコラム更新となります。

おかげさまで、当院は開業から3年以上が経過し、多くの患者さんに来院いただいております。

新たに、毎週火曜日・日曜日・祝日に医院の休診日を設けたことも相まって、非常に予約が取りづらい日もありますが、『患者さん一人ひとりにお時間をしっかり確保して診療する』をポリシーとして、皆さんのお口の健康を守っております。何卒ご了承下さい。      

 

さて、新しく当院を訪れる患者さんは、“既にほかの歯科医院で治療中”“ほかにかかりつけの歯科医院がある”という状況の、いわゆるセカンドオピニオンに該当する方が、非常に多いです。

その中でも、今回のコラムのタイトルにあるような『歯の神経を残したい、取りたくない』『歯を残したい、抜きたくない』といった、保存治療を希望する方がとても多いです。

要は、ほとんどの方が、今まで通っていた歯科医院やたまたま行った歯科医院で『歯の神経を取ります』『歯を抜きます』と説明を受けたわけです。

今回は、ここに焦点を合わせてお話をしたいと思います。
しかし、よくあるコラムのように話しても面白くないと思うので、少し変わった角度からお話をしていきます。

似たようなコラムに『抜歯か、保存か』というものがあるので、併せてご覧ください。
抜歯か、保存か 〜抜歯の原因と歯科医師最大の難問について〜|ブログ|三好歯科 自由が丘

時間のない方は、このコラムの最後のまとめだけでもご覧ください。

 

大前提として『歯の神経を残したい』『歯を抜きたくない』は当たり前

当たり前なのですが、人は誰しも、歯の神経は取りたくないと思います。『歯を抜きたくない』『自分の歯を残したい』『歯をできるだけ削りたくない』――。患者さんが100人いたら、ほぼ100人が同じことを言います。

一概には言えませんが、歯の寿命=抜歯までの時間と定義するなら、歯の神経などは保存するほうが、寿命は厳密には長くなります。つまり、皆さんが思うように、できれば歯の神経は取らないほうが良いのです。

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ここで1つ、重要なポイントがあります。

多くの患者さんは、ただ『歯の神経を残したい』『歯を残したい』のではありません。神経を残したor歯を残した上で、今までと変わらず痛みなく、普通に食事を摂れることが希望なのです。

当たり前じゃないか、と思うかもしれませんが、歯科医学上では、『歯の神経や歯を保存すること』と『痛みなどのトラブルがなく普通に食事を摂れること』は、ほぼリンクしていません。

つまり、この2つは歯科医側から見ると“別の話”なのですが、患者さんは『歯を残したい』と発言する中で、当然のように2つのことを同時に希望しているケースがほとんどです。

よって、この話の重要な要素は、歯の神経を取るor抜歯することのメリット・デメリット、逆に保存する場合のメリット・デメリットを、しっかり理解しておくことです。その上で、ご自身の歯が現状を正しく理解することも大事ですが、これは個々で大きく異なるため、歯科医師による診断が必要になります。

 

患者さんに知ってほしい歯科治療5つの事実

さて、歯科医師側の思考を含めて、患者さん側にもぜひ知っておいていただきたいことが、実は多々あります。

 

1.そもそも、歯の治療は難しいもの

歯の神経および歯そのものの保存を試みる治療は、そもそも技術的に難しく、患者さんには、時間的にもコスト的にも負担がかかります。治療を始めるときの状況にもよりますが、予後が不透明で、非常に短期間で次の問題が起こる可能性も否定できないものです。それ故、治療をめぐって歯科医院側と患者さん側でトラブルになりやすいため、治療前の事前説明にも非常に時間がかかります。

※例えば…歯の神経を残す治療を○万円かけて行ったが、1年以内に痛みが出て、歯の神経を取ることになった。歯を残すために〇万円かけたが、また1年後に痛みが出て、結局、抜歯をすることになった、というケースがあります。

 

2.患者さん自身が現況を正しく理解することが大事

現況を理解していない以前に、歯科医師から適切な説明を受けていないケースもあります。しかし、歯の保存は明らかに無理なのか、トライはできるレベルなのか、これは実際に診察を行わないとわかりません。他院で『歯の神経を取る』と言われ、本当は残したいと思って当院へ来院された方の約10人に1人は、既に神経を取る治療が施されていることもあるからです。

 

3.歯の神経や歯を残す治療のほうが、治療コストが高くなる場合もある

患者さんが、『歯の神経を取ったり歯を抜いたりしたほうが、治療コストが高くなる』と思い込んでいるケースもあります。たとえば『抜歯とインプラントを勧められたけど、インプラントは1本50万円もして高いから嫌だ』と話す方もいます。

しかし実は、治療コストが一番かかるのは、歯の保存を試みる治療をする→治療後に短期間でトラブルが発生→抜歯および歯の神経を取る治療、というパターンです。当然ですが、歯の保存を試みた分だけ、治療のコストは高くなります。

4.歯の神経を取ったり抜歯をしたほうが、トラブル発生までの期間が長い

治療環境をしっかり整えてコストもかければ、基本的に、歯を残す治療より、歯の神経および歯そのものを除去する治療のほうが、次にトラブルが起こるまでの期間が平均して長い傾向にあります。抜歯に至るまでの寿命は短くなりますが、1年未満など短期間でのトラブルが起こる可能性は、極めて少ないです。

 

5.保険診療でできる治療法は限られている

保険診療内でできる治療法は限られています。そのため、場合によっては、保険診療では技術的にも時間的にも材料的にも、十分とは言い切れない環境下になるため、治療をしても予後がさらに悪くなり、結局、歯を抜いたほうが早かった、ということになりやすいのです。(実際問題、我々、歯科医師の世界には『保険なら抜歯』という単語が存在しています)

 

実際にあった2つの例をご紹介

ではここで、当院へいらした患者さんの例をもとに、具体的なお話をします。

実例1:歯髄温存療法(VPT)

【患者さんの主訴】

歯の神経を取りたくない、残したい。

【診療の経緯】

患者さんは、痛みも何もないけれど、久々に歯科検診に行ったところ、『大きなむし歯があるので、歯の神経を取りましょう』と、説明を受けました。しかし、患者さんは歯の神経を取りたくなかったため、当院へ来院されました。

当院で診査をした結果、かなり大きなむし歯があるのは間違いないものの、現在無症状かつ神経も正常で、むし歯の形などの条件から、歯の神経保存にトライできると判断しました。

この治療を行う上で、患者さんが希望されたのは、『歯の神経をできるだけ取りたくない』という1点だけです。患者さんは『歯の神経を取るのは悪いことだし、できたら取らないほうがいい』と考えていました。

ここからが大切です。

この治療を行う上で患者さんに許容してもらいたかったのは、次の4点です。

*歯科材料を含めて自費診療となる。
*今は無症状だけれど、むし歯を取って間もなく痛みが出る可能性があり、その痛みが強ければ、歯の神経を取ることになる。
*予後の保証および治療費の返金はできない(何十年も持つかもしれないし、私たちもそれを期待して治療するが、1年以内に何か起きる可能性もある)
*何かトラブルが起きたら、その時は恐らく歯の神経を取る治療となり、被せ物などを含めてイチから治療し直すことになる。その分、治療費もかかる。

これらの条件を了承いただく必要があるというのが、もっとも重要な部分です。

今回のケースでは、患者さんの歯の寿命を考えると、歯の神経を保存する治療(VPT:歯髄温存療法)を行う1択でした。患者さんに、これらすべての説明をしてご相談した結果、VPTを行うことに決まりました。

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そして、もうひとつ大切なのは、なぜ前の歯科医院はこのような話を一切せず、いきなり歯の神経を取ると説明したのか?という点です。

理由はいろいろ考えられますが、おおよそ次の4点でしょう。

1.ここまで丁寧に説明する時間が取れない(保険診療がベースなら普通です)。
2.痛みが出たり、治療した歯がすぐダメになったりした際のトラブルを避けたかった(そもそも説明できないなら、トラブルの確率は上がります)。
3.歯科医師がその治療技術を持っていない、もしくはあまり経験がない(技量は、歯科医師によってかなり差があります)。
4.初めから、患者さんから『治療費をかけられない』『保険診療内での治療がいい』という希望が強く存在した(『保険なら抜歯』の概念と同じです)。

1つめの『なぜ説明の時間をとれないのか』については、非常に繊細かつ長い話になってしまうので、今回は言及しません。

ただ、歯科医師は基本的に、現在無症状の部位に治療介入することで痛みが出ることを、患者さん以上に嫌がります。そして、歯の神経にせよ歯そのものにせよ、保存をトライするほうが、痛みが出る確率が上がってしまう、という事実が存在するのです。

 

実例2:抜歯、ブリッジ、インプラント

【主訴】

奥歯を抜きたくない。

【経緯】

患者さんは、1本の被せ物が外れたため、近くの歯科医院へ行ったところ『歯の根っこが割れているため抜歯をしましょう』と診断されたそうです。しかし、本当は歯を抜きたくなかったので、当院へセカンドオピニオンのために来院されました。

診査の結果、歯の根に、完全な垂直性の破折が確認されたため、当院でも抜歯の診断となりました。歯の保存治療にトライをしても、コストに見合う効果はほぼ期待できないからです。

患者さんからは、『それでも何とかして歯を保存できないか』と相談されましたが、次の2つのデメリットをお話ししました。

1.歯を保存する治療は、被せ物を含めたら治療費が高額になる。
2.それをして尚、今回のようなケースだと、噛んだら1週間以内にダメになる可能性もある。

患者さんとしても『歯は残したいけれど、噛めないなら意味がない』という認識があり、ご相談した結果、抜歯をした上で、ブリッジおよびインプラントを検討することになりました。

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そもそも歯の保存は難しい“トライ治療”

『歯の神経を残したい』『歯を抜きたくない』と思っている患者さんは、多いどころかほぼ全員だと思います。当たり前ですよね。しかし、患者さんは、トラブルなく食べ物が噛めることまでセットで希望しています。

希望されていても、患者さんの現状を診てみないと、歯の保存治療にトライできるか判断できないため、まずは歯科医師がしっかり診断する必要があります。

『歯を残す治療=歯を保存する治療』ですが、これはあくまでも“トライ”であり、予後の成果にはさまざまな要素が絡むため、保証は一切できません。いろいろな条件が上手く推移すれば、何十年ともつ可能性もありますが、逆に1年以内もしくは極論1ヶ月以内に、何かしらのトラブル起きる可能性もあります。

歯の保存治療は、そのほとんどが歯科医師の技術や歯科材料に依存するものです。さらに、自由診療となることが大多数のため、トラブルが起きてしまった場合、治療の総コストは、保存治療というトライをした分、高くなります。

これらを考えると、歯の保存治療にトライするか否かについては、歯科医師の説明が相当しっかりしていないと、患者さん自身も理解いただくのが難しいと思います。

理解いただいていないまま治療を始めてしまうとトラブルのもとになるため、歯科医院によっては、トライできる可能性があるにもかかわらず、初めから『歯の神経を取ります』『抜歯します』としか説明しないこともあるのです。

なお、そもそもトライすら不可能なため説明していないケースもあります。そこは患者さんによる判断はほぼ不可能なため、疑問や不安、希望があれば、セカンドオピニオンを受けていただくことをお勧めします。1軒の歯科医院を受診しただけでは、判断がなかなか難しいことも多いです。かといって、5軒以上もの歯科医院へ行く必要は、まずありません。2軒から、多くても3軒くらいでしょうか。

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私は、皆さんに常々お伝えしておりますが、歯科医院ごとに言うことが違うのは、普通です。

日本の医療制度の影響で、患者さんは、どの歯科医院を見てもなかなか違いがわからず、強いて言えば、立地と内装、HPくらいしか変わらないのでは、と判断してしまう現状があります。

人は誰しも、自分にとって都合の良いことを信じる傾向があります。それが正しいかを判断するのはとても難しく、一概に解答が出せないこともあります。

自由が丘の歯医者 三好歯科 自由が丘は、セカンドオピニオンも随時承っております。すべての問題を100%解決できるわけではありませんが、何かしら有用な情報はご提供できると思います。ご希望の方は、お電話またはWEB予約をご利用ください。お待ちしております。

 

併せてこちらもご覧ください。
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