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虫歯になる時、お口の中はどうなっている?『虫歯学』その1

虫歯になる時、お口の中はどうなっている?『虫歯学』その1

こんにちは、三好歯科 自由が丘 院長の三好です。

今回は、皆様が「歯が痛い」と思った時、真っ先に気になるであろう虫歯(う蝕・カリエス)について説明したいと思います。

私は、過去のコラムで何度か『虫歯も歯周病も細菌による感染症』と記載していますが、厳密には、虫歯は細菌による感染症とは言い切れません。患者様にわかりやすく伝えるためにこのような表現をしておりますが、今回はその理由もお伝えしたいと思います。

今回・次回と2回にわたるこの話は虫歯学(う蝕学)別名『カリオロジー』と呼ばれる分野のお話です。よく、虫歯の進行度合いを表す表現でC1、C2、C3、C4などがあります。しかし、虫歯の予防を考える際には進行度合いを知って頂く以上に、虫歯の根本的な原因を学んで頂くことが一番の予防になります。


虫歯はお口の中の常在菌が引き起こす

 

これまで、虫歯の細菌として有名なミュータンスレンサ球菌によって虫歯は引き起こされると考えられていました。しかし、この細菌は常在菌(※)で、虫歯が無くても存在していることから『特定の細菌がいる=虫歯になる』という考え方は違うとわかってきました。

※常在菌:多くの人に見られる細菌です。基本的に病原性はありません。

そこで現在では『生態学的プラーク説』と呼ばれる説が支持されております。この説は、特定の細菌が虫歯を起こすのではなく、お口の中に元々いる常在菌が複雑に絡み合い、ある条件を満たしてしまうと虫歯になるという考え方です。

様々な細菌が集合体として歯に張り付いている状態をバイオフィルムと呼びます。似たような言葉にプラークがありますが、バイオフィルムとプラークは同じとする考え方と、違うとする考え方があります。しかしどちらも、細菌の集合体で歯に良くないもの(虫歯や歯周病を発生させる原因になる)という認識で全く問題ありません。

食後のお口の中は酸性

ここで、phという学校の理科の授業で習うような話が出てきます。phは「水素イオン指数」と呼ばれ、酸性やアルカリ性の度合いを表すものです。簡単に言うとph7が中性、これより数字が低いと酸性で、歯にとっては良くない環境ということになります。

食べ物には様々な糖(純粋に甘い糖、他にはご飯などの糖質も含む)が入っています。この糖をエサに、バイオフィルム中の細菌達は酸を作り出します。酸を作り出しているのでphの数値は低くなります。

しかし、人間は唾液と唾液中の細菌によって中性であるph7を保てるようになっています。そのため通常、口の中は一時的に酸性に傾いても、虫歯になる前に歯にとって安全な環境、つまり中性へ戻ります。

三好歯科 自由が丘 虫歯になる時、お口の中はどうなっている?食事の画像

 

脱灰と再石灰化について

phは飲食の度に激しく変動します。食事の直後はphが酸性になるので、脱灰が始まります。脱灰とは、エナメル質など歯の表面が溶けていく状態です。脱灰はphが7を少しでも下回ると始まるわけではありません。脱灰が始まるph(臨界ph)はエナメル質で約ph5.5、象牙質で約ph6.0と言われており、これを下回る(酸性に傾く)と脱灰が始まるとされています。

ちなみにphは何を食べても大体下回るので、食事の内容で完全に回避することは不可能です。

しかし、脱灰がそこまで進む前(食後30分から1時間半ほど)に唾液の作用によってphは7に戻されていきます。そして脱灰が起こらない数値まで戻ると起きるのが『再石灰化』と呼ばれるものです。歯の表面を回復させ、正常な状態へ戻す自然の能力です。現代の食生活において、もしこの能力がなければ私たちは全員虫歯だらけです。

再石灰化は、人間が兼ね備えた最強の免疫機能の1つと言えるでしょう。

免疫機能があるのに虫歯になるのはなぜ?

さて、先程の話で
・バイオフィルムが糖をエサに酸を作り出して歯を脱灰させる
・しかし簡単には虫歯にならないように、唾液が持つ免疫機能で歯を再石灰化してくれる。
ということがご理解いただけたかと思います。

では結局どうなったら虫歯になるのか?

人は食事の度に起こる脱灰を、唾液による再石灰化でバランスをとり虫歯にならないようにしています。
虫歯になる条件として、簡単に言うと下記の3つが挙げられます。

・糖の摂取量、摂取頻度が高い
・バイオフィルムが多い
・唾液が少ない

この3つは全て、脱灰と再石灰化のバランスを崩し、脱灰を起きやすくします。つまり、脱灰のペースや強さが増して再石灰化が間に合わない or 再石灰化の機能が低下してバランスが崩れると脱灰が進み、虫歯になるということです。

脱灰>再石灰化

この条件が継続される時間が長く、頻度が多い人ほど虫歯になるということです。これを図で表したのが、有名な『ステファンカーブ』と言われるものです。

※ステファンカーブの図はこちら(日本ヘルスケア歯科研究会サイト)

3つの“虫歯リスク”を詳しくチェック

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・糖の摂取量、摂取頻度が高い
間食が多いと特に危険です。糖自体にリスクがありますが、一度の摂取量より頻度のほうが重要です。
食事と食事の間の時間がしっかり開いていればphは中性に戻りますが、まだ戻っていないのに次の食事を摂るとphは更に酸性に傾いてしまうので、中性に戻るまで時間がかかります。
ですから、次の食事までの時間が短かったり、間食が多かったりすると虫歯のリスクが高まるのです。
お菓子をだらだら少しずつ食べ続けたり、ジュースを2時間くらいかけて少しずつ飲むなども接種頻度が高いリスクのある行動となります。

・バイオフィルムが多い
歯磨きがうまく出来ているかによるので、非常に判別しやすいです。
日頃からクオリティの高い歯磨きを行い、酸を作る細菌の数をそもそも減らしておきましょう。バイオフィルムが多ければ、酸を作る細菌が多くなり、非常に虫歯のリスクが高いと言えるでしょう。

・唾液が少ない
お口のphを中性に戻して再石灰化させるためには、唾液が必須です。唾液が少ないということは虫歯のリスクが高くなります。咀嚼の回数が少なかったり、高齢者に多い口腔乾燥症だったりすると、唾液が少なくなります。

もし咬む能力が低下しているなら、しっかりと食事が出来る口腔状態にしなければいけません。
口腔乾燥症なら、少しでも口の中を湿潤状態に保つように様々な対応をしたり、次回のコラムで記載する『フッ素』を使用して対策しないといけません。

『細菌感染=虫歯』とは言い切れない

このコラムの冒頭で、『厳密には、虫歯は細菌による感染症とは言い切れません。』とお伝えしました。
理由は、虫歯の原因の1つであるミュータンスレンサ球菌は赤ちゃんの時は口内に存在しませんが、成長過程において感染はほぼ100%防げないので、全ての人が感染していると言えるのが1つ。そして虫歯は生活習慣の乱れなどが基で起こる、バイオフィルムの酸生成とphバランスの崩れによる疾患と考えられるため、『細菌感染=虫歯』とは断定できないのです。

虫歯予防の第一歩は虫歯の原因を知ること

虫歯の原因を知って毎日の生活習慣を整える、歯磨きを丁寧にする、歯医者で歯のクリーニングをしっかり行うことが、虫歯予防には重要です。

今回は『虫歯になる時、口の中でどのような事が起きているのか?』に着目しました。少し難しい話ばかりでしたが、次回はもう少し具体的に

・フッ素を使うとどうなるのか?
・歯ブラシは1日何回やれば良いのか?
・歯ブラシは電動歯ブラシのほうが良いのか?
・フロスは使ったほうが良いのか?
・ご飯を食べた後すぐの歯ブラシはダメと聞いたけれど本当か?
・キシリトールって虫歯にならないのか?

この辺りの疑問にQ&A方式で回答していきたいと思います。

当院の「予防歯科・歯のクリーニング」のページも是非ご覧ください。
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